特発性正常圧水頭症について
特発性正常圧水頭症(iNPH)とはどんな病気ですか?
高齢になって次第に歩くのが遅くなり、小刻みやすり足といった歩き方をする場合があります。このような歩行障害に、物忘れや自発性の低下(認知障害)、あるいは尿漏れ(尿失禁)といった症状が加わってくることがあります。
これらは高齢者ではよく見られる症状であり、いろいろな病気でおこりますが、その中に今まであまり知られていなかった特発性正常圧水頭症(iNPH)という病気があります。iNPHは頭の中の水(髄液)の流れが悪くなって起こることから、髄液シャント術という手術をすることによって、歩行障害、認知障害、尿失禁といった症状がよくなります。
![]() |
![]() |
![]() |
| 小刻み すり足 転びやすい |
物忘れ ボーとしている 作業に時間がかかるようになった |
尿漏れ |
このような症状があれば
洛和会音羽病院 正常圧水頭症センターにご相談ください。
電話番号 075(593)4111(代)
どんな検査が必要ですか?
特発性正常圧水頭症(iNPH)は頭の病気ですから、頭のMRIという画像検査が必要になります。これでおおまかな診断ができます。
iNPHのMRIでの特徴は頭の天辺(高位円蓋部)あたりにまで脳実質でつまっていることです。脳萎縮では頭蓋骨と脳実質との間には隙間が見られます。

特発性正常圧水頭症(iNPH)例

脳萎縮例
そして、つぎに、髄液排除試験(タップテスト)という検査を受けていただきます。この検査は背骨から腰椎穿刺といって比較的細い針で髄液を抜く検査です。この検査で髄液を30ccほどゆっくりと抜きますが、早い人では1時間後に歩き易くなったという変化がみられます。歩き易くなったという変化は検査の翌日に見られる人もあります。この変化は1日だけで元に戻ってしまう人もあれば、長く続く人もあります。また、話し方がはっきりとしてきたとか、尿漏れがなくなったといった変化は数日から1週間程度たってみられることがあります。タップテストで症状の改善がみられた人は髄液シャント術で症状の持続的な改善が期待できます。入院期間は8日程度です。タップテストで効果がみられない場合には、“経過を見る”・“再度タップテストを行う”・“他のテストを行う”の3つの選択肢があります。
髄液シャント術とはどんな手術ですか?
タップテストは検査ですので、効果持続のためには髄液シャント術が必要となります。
髄液シャント術にはVPシャント、VAシャント、LPシャントと呼ばれる三種類の手術があります。シャント手術は脳神経外科の手術の中では比較的容易な手術とされていますが、全身麻酔下で行いますので、麻酔科のチェックが必要になります。手術時間は1~2時間程度です。皮膚の下にシリコンでできた管を通して、頭[脳室]と腹腔[VP]、頭[脳室]と心房[VA]、腰[腰椎くも膜下腔]と腹腔[LP]を連結し、髄液をお腹の中で吸収させるものです。このシャントに用いるのはシリコンの管と髄液の圧を調節するバルブで、最近は体外から術後に設定圧が変えられるバルブが使用されています。これによって、手術の合併症は少なくなっています。入院期間は2~3週間です。
髄液シャント術でどんな効果が期待できますか?
歩行の改善や自発性向上、尿失禁の消失といった症状の変化は、患者さまの自立性を高め、介護される方の負担軽減に役立ちます。
髄液シャント術の術後はどのようなことに注意すればいいのですか?
手術後に発熱や腹痛、あるいは、手術部の皮膚に炎症がないかをチェックします。手術後に一時的に発熱や腹痛がみられることがありますが、自然に消失すれば心配はありません。発熱や腹痛が持続するようであれば、髄膜炎などの可能性も考えて検査を行います。また、ベッドから起き上がると頭痛を訴えられる場合があります。次第に症状が軽快してくることが多いのですが、頭痛が続くようであれば、シャントバルブの設定圧を上昇させることになります。術後にシャント管を髄液が流れすぎて、頭の中に血腫(慢性硬膜下血腫)ができてくる場合があるからです。血腫が大きいと手術が必要となりますが、バルブの設定圧を上昇させることで、手術にまで至らずにすむ場合もあります。
一方、症状の改善が見られなくなり、元の状態に戻ってしまう場合があります。高齢者は他のいろいろな病気を合併していることが多く、症状が改善しない場合もありますが、シャント管の閉塞がないかどうかをチェックします。“肥満と便秘はシャントの敵”といわれていますが、シャントの閉塞が無くても髄液の流れが悪くなることがあります。太りすぎと排便の習慣に注意してください。
シャント手術で歩行の改善が得られ、本人の歩く意欲が出てくるのはすばらしいことですが、高齢の方が多いので、転倒する可能性がない訳ではありません。介護負担の軽減は望ましいことですが、転倒防止のために、近くでの見守りは必要と考えています。


