脳神経外科 顔面痙攣の外科的治療

1:顔面痙攣 とは

顔面痙攣とは、片側の顔面筋肉のピクツキで、緊張などによって増強します。多くの場合、下眼瞼(下まぶた)からはじまり、次第に広がって口角も歪むようになったり、目が開けられなくなったりします。顔面のつっぱり感もあります。

原因は顔面神経が脳実質から出てすぐの部分で、血管が神経を圧迫し、神経に異常な刺激が加わるためと考えられています。

 

2.診断法 

上記に述べた症状で診断可能です。両側性(顔の左右両方)ではなく片側だけに症状があることが大切です。また、目を強くつむった後に目を開けてもらうと、顔面痙攣が誘発されやすいのも特徴です。顔面神経麻痺の後に類似の症状が出ることがありますが、これは血管が神経を圧迫して起こるわけではないので、外科的治療の対象ではありません。

画像検査ではMRIで顔面神経が脳実質から出る部分を薄い断面で撮像する検査法を用いると、多くの例で神経の周囲に血管が当たっているのが観察されます。

MRI画像
<細い青矢印>圧迫血管 <太い白矢印>血管が顔面神経根の基部を圧迫

 

3:治療法

顔面痙攣の主な治療法としては、1)薬物治療、2)ボトックス局所注射、3)手術、があります。

薬物治療としては、抗けいれん剤や抗不安剤などが用いられます。軽度の場合には有効ですが、継続して薬を使用していると次第に効果が減弱し、薬を増量すると眠気やふらつきがみられるようになります。

ボトックス局所注射はピクツキのある筋肉にボトックスという薬を局所注射する治療法です。外来で治療可能な点が優れていますが、対症療法で効果は数ヵ月程度しか持続しないことや、1回の治療費が高価な点がやや難点です。

手術は原因となる血管の圧迫を解除できるという他の治療法にはない利点があり、治癒率も80%以上です。手術時期に関しては、この病気は放置しても生命に危険がある訳ではありませんが、顔面という目立つ部位での症状が問題となりますので、積極的に治療を受けたいと思われた時が手術適応の時期と考えています。
外科的治療として、当科で行っているのは神経血管減圧術という手術法です。これは耳の少し後ろの骨に、500円玉1個半くらいの孔を開けて、そこから手術用顕微鏡を用いて顔面神経の脳実質からの出口部を観察し、原因となっている圧迫血管を見つけて、神経に当たらないように移動させるというものです。手術は全身麻酔で5~6時間程度です。手術後1週間で抜糸、入院期間は2週間程度です。個人差はありますが、退院後は早期から通常の生活に戻って頂けます。

 

4:治療効果

顔面痙攣の手術後に痙攣が消失していくのには三つのタイプがあります。
一つは手術直後からピクツキが全く消失してしまうタイプです。次は術後に消失していたのに、数日後に再びピクツキが出現するタイプです。これは経過をみていると、次第に強さ、頻度ともに減少していき、数週~数ヵ月で消失するタイプです。最後は手術直後もピクツキに変化がみられないタイプです。これも経過をみていると、次第に軽減してきて、最終的には消失するタイプです。

今のところ、手術後に三つのうちのどのタイプで消失するのかは予測できません。このようにゆっくりと消失していく例がありますので、手術後最低6ヵ月から1年は経過観察が必要と考えています。
長期間経過観察を行うと、10%程度に症状の再発がみられます。再発は別の血管が圧迫をする場合と神経周囲の強い癒着がみられる場合があります。剥離を行うことによって症状の改善を得ることが可能です。もちろん、ボトックス等の治療も選択の一つです。

 

5:合併症

手術後の合併症としては、顔面神経麻痺、聴力低下、髄液漏、髄膜炎、創部感染、脳内血腫などがあります。顔面神経の近くを操作しますので、術直後に顔面神経麻痺が起こる可能性があります。多くの場合、麻痺の程度は軽く、1~2週間で消失します。また、聴神経の近くを操作しますので、聴力低下がおこることがあります。聴力低下や顔面神経麻痺といった合併症の頻度は数%です。軽度の訴えとしてはふらつき感、頭痛、創部痛、耳閉感などがあります。私たちは経験していませんが、脳深部の手術であり、意識障害や小脳症状あるいは運動麻痺といった重篤な症状がでる可能性は否定できません。

 

6:最後に

手術は絶対に安全というものではありませんが、合併症の頻度はそれほど高いものではありません。神経血管減圧術は顔面痙攣に対する唯一の“治癒”可能な治療法であり、脳神経外科領域での確立された治療法です。顔面痙攣でお悩みの方は一度ご相談ください。

 

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