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矯正・顎矯正外来 Q&A

どんな人が治療対象となるのでしょうか?

少し聞き慣れないかもしれませんが、「顎変形症(がくへんけいしょう)」という病気であると診断された方が治療対象となります。顎変形症は、上顎の骨または下顎の骨、あるいは両方の大きさや形・位置などの異常、上下のあごの関係の異常によって、顎顔面の形態的異常と咬合の異常を来し、美的不調和を示すものと定義されます。
これらの歯の位置を含めた顎骨の異常は、機能的には咀嚼(そしゃく)、嚥下(えんげ)、発音、呼吸などの異常を生じるとともに、審美的にも、さまざまな障害を引き起こす可能性があります。
治療としては、歯科矯正治療だけでは不十分なことが多く、顎骨に対する外科的な手法、すなわち顎矯正外科(がくきょうせいげか)により、顎顔面の形態的異常を修正して、機能的にも審美的にも満足が得られるようにするのです。ただし、美容形成と顎矯正治療は根本的に異なるもので「こんな風に顔を変えたい」というご要望にはお応えできません。一方で、顎を外科的に動かすのに付随して、顔の形が変わることは避けられません。上顎を動かせば鼻の形や周囲皮膚の形態が、下顎を動かせば唇から顎の先(オトガイ部)の形が変わります。

治療期間はどれぐらいですか?

患者さんそれぞれの顎や噛み合わせの状態に応じて変わります。
一般的には、まず、われわれ口腔外科医と矯正をしていただく先生との「診断」が一致し、それを患者さんに説明して納得していただいてから治療が始まるわけですが、最初に、治療の障害となる虫歯や親知らずの処置が必要です。
その後、術前の矯正治療(歯に装置をつけてワイヤーで動かします)に取りかかっていただき、手術に最適な歯並びになったところで、手術のための再診断と、口腔外科への紹介が行われます。ここまでの期間が最も長くかかり、年齢や動かす幅にもよりますが、1~2年を要することが多いようです。
手術後の6カ月間は、当院と矯正の先生との両方を受診していただきます。この間に術後の経過観察を怠ると、噛み合わせがずれてしまう可能性があります。面倒くさくても、何も問題が起きていないことを確認するために、必ず受診してください。術後矯正は1年程度で終了することが多いようです。

治療に必要な費用は? 保険はききますか?

「顎変形症」という病名に対する手術・入院費用は、一部の例外を除き、基本的には健康保険が適応されます。育成医療・更生医療の指定を受けた矯正歯科医院では保険で定められた歯科矯正の治療費を、当院でも同じく保険で定められた手術・入院の治療費をお支払いいただきます。
また、顎矯正治療は高額療養費に対する償還払い制度の対象になりますので、1カ月間に支払われた医療費の自己負担額(差額ベッド代などは除く)が定められた限度額(標準報酬月額により変わる)を超えた場合に「患者さんからの請求、申請」により、払い戻される場合があります。
該当するかどうかのご確認や申請の手続きは、市町村の窓口などでお願いします。
退院時にお支払いになる費用は、手術方法、骨の固定に使う材料、入院中に必要な検査や薬の量によって異なります。以下の当院での一例を参考にしてください。

手術名 固定材料 費用の例
下顎枝矢状分割法 チタンスクリュー(4本) 約17万円
吸収性スクリュー(4本) 約21万円
チタンプレート(2枚) 約28万円
下顎骨延長法 延長装置(1個) 約28万円
オトガイ形成術 チタンプレート(1枚) 約9万円
Le Fort I 型骨切り術
+下顎枝矢状分割法
チタンプレート(2枚)
+チタンスクリュー(4本)
約38万円
Le Fort I 型骨切り術
+下顎枝矢状分割法
+オトガイ形成術
チタンプレート(2枚)
+チタンプレート(2枚)
+チタンプレート(1枚)
約52万円
Le Fort I 型骨切り術
+下顎枝垂直骨切り術
チタンプレート(2枚) 約33万円
吸収性プレート(4枚) 約49万円
外科的口蓋拡大術 なし(持ち込み) 約10万円
前歯部歯槽骨切り術 なし(持ち込み) 約12万円
皮質骨骨切り術 なし(持ち込み) 約8万円
手術を受ける場合どんな準備が必要ですか?

検査

手術は全て全身麻酔で行うため、心臓やほかの内臓の病気などで治療に支障がないかどうかや、隠れた病気がないかどうかなどを十分に検査する必要があります。かかりつけの病院があれば、紹介状をお書きしますので、まず受診していただくのが良いでしょう。治療を受けられる方が未成年の場合、保護者の方には必ず、手術内容の説明をお聞きいただいたうえで同意をいただきます。手術によっては、自己血輸血が必要な場合があります。貧血傾向のある方は鉄分の摂取を心掛けていただき、緑茶はあまり飲まないようにしてください。


手術は入院が必要ですか?

入院

特別な場合を除き、入院いただいたうえで、全身麻酔下で治療します。詳しくは術前検査の際にお話ししますが、手術の前日に入院していただき、平均術後5日目で退院となります。すなわち、手術の日を入れて約1週間とお考えください。(皮質骨骨切り術、外科的口蓋拡大術などは手術当日の入院、1泊2日で済む場合があります) 入院中は、なるべく安静を心掛けてください。痛みは個人差が大きいものですが、術後2日ほどで落ち着くのが普通です。ほかにも、麻酔チューブによる喉の痛みや、手術によっては息がしづらいこともあります。入浴・シャワーは、熱が下がったら許可されます。術後は、1日に2回、外来で口腔内の洗浄を行いますが、ご自身でも食事後の保清に気をつけてください。詳しくは入院検査の終了後に入院生活の案内をお渡ししますので、お読みください。


手術はどれぐらい時間がかかるのですか? 出血量は? 症例数は?

手術によって変わります。下記の表をご覧ください。複数の手術を行う場合は、時間、出血量ともに、足して考えてください。なお、術後の吸引による出血量は含まれていません。手術による出血で輸血が必要になった例は、当院ではありません。

手術名 所要時間 術中出血量 症例数
下顎枝矢状分割法 2:00 150cc 26
下顎枝垂直骨切り術 1:30 100cc未満 60
下顎骨延長法 2:00 150cc 2
オトガイ形成術 1:00 100cc未満 32
Le Fort I 型骨切り術 2:30 250cc 59
上顎骨延長法 2:30 250cc 2
外科的口蓋拡大術 2:00 100cc未満 4
前歯部歯槽骨切り術 1:30 200cc 12
皮質骨骨切り術 1:00 100cc未満 6
どれぐらいで手術前の普通の生活(会話・食事)に戻れますか?

下顎枝垂直骨切り術を除き、退院時には口を開けられる状態ですので、会話には支障ありません。しかし、口が開きにくいのはしばらく続きますので、吐き気をもよおす原因となるようなことは、術後2週間はできるだけ避けてください。例えば空腹での飲酒、コーヒーや炭酸飲料の飲み過ぎ、たばこの吸い過ぎなどです。もしも吐き気をもよおしたら、ゴムで固定されている場合は、躊躇(ちゅうちょ)せず自分でゴムを切って口を開けてください。そのために、常に小さなはさみを持ち歩くことも必要です。口を開けることができないという状態は、緊急時には非常に危険であるという認識をもって行動してください。

食事は、退院直後からしばらくは軟食を取るようにしてください。
経口流動食を処方箋でお出しすることもできます。ゼリー食や栄養補助食品は、当院の地下のコンビニで販売していますし、ケース単位で購入される場合には、メーカーの宅配サービスをご利用いただけます。(下記)

どんな手術でも、おおむね1カ月後には、硬いもの以外は食べられるようになるでしょう。顎矯正手術は顎の骨折と同じで、骨がくっついてしまえば、食べること・話すことは、リハビリをしているようなものです。食べられそうなものには積極的に挑戦していってください。

社会人の方にとっては、仕事にいつ復帰できるのかは、大変気になるところですね。もちろん、手術法によって異なりますし、職種によっても異なります。前述のように、下顎枝垂直骨切り術以外の手術では、退院時には口が開けられるので、肉体的な重労働を除いて、体力が回復すれば、術後2週間程度でも復帰することが可能です。

下顎枝垂直骨切り術を受けられた方は、食事以外の時間もなるべくゴムをかけておいていただきたいので、仕事上の会話に支障を来すかもしれません。術後1カ月たてば、必要に応じてゴムを外していただいても大きな問題にはなりません(ただし睡眠中は必ず付けてください)ので、仕事に制限があるのは、長くても術後1カ月とお考えください。ただし、激しい運動や顎を強打するおそれがあるスポーツは、さらに1カ月間は控えてください。また、オトガイ形成術や下顎の前歯部歯槽骨切り術を受けられた方は、スポンジ状の圧迫素材(レストンR)を最低でも術後3カ月間使用していただくのが効果的です。見た目が気になるかもしれませんが、日中もお使いいただくのが基本です。同様に、皮膚を切ってスクリューを止めた場合は、サージカルテープを6カ月間使っていただくと、ほとんど傷が目立たなくなります。
ゴムのかけ方、テープの貼り方などの細かい指導や次回来院のお約束などは、退院時にさせていただきます。

手術の後遺症はありますか?

術される場所は、顔や顎といった、非常に複雑で繊細な構造と機能をもった部分であり、手術法によって、起こり得る後遺症は違ってきます。(詳しくは矯正・顎矯正外来をご参照ください)
下顎枝矢状分割法の最も重篤な障害は、下唇の感覚が一時的に鈍くなることで、この手術を受けた方の約1割に認められます。また、歯槽骨切り術では骨を削った部分の近くの歯の色が悪くなることがあります。上顎の手術では、顔の腫れがなかなか引きにくい方や、鼻の通りが悪くなったと感じられる方もおられます。
後遺症ではないのですが、ご自身の容貌の変化に過度の期待をお持ちだった場合は「思い通りの顔の形にならなかった」と感じられるかもしれません。しかし、人間の顔面骨格の位置を変えるにはおのずと制約があり、設計図で作るロボットのようにはいかないことをご了承ください。

どんな人が入院や手術を担当するのですか?

手術

手術時は、その手術の執刀医となれる者が複数参加し、助手を含め3~4人がチームを組んで行います。外来での術前検査から入院のお世話および退院後の経過観察まで、同じ者が担当します。手術の執刀は、基本的には紹介をいただいた者が行いますが、研修指定病院ですので、簡単な処置は、指導医監督のもとで研修中の歯科医師が行う場合があります。


金属のプレートやスクリューは取る必要がありますか? 取るとしたら入院は?

手術に用いたチタン製のプレートやスクリューは、人体には無害であると言われているものなので、「必ず取らなければならない」ということはありません。
しかし、長年の間に、体の中で表面がイオン化して、血液の流れに乗って肺などの臓器に蓄積することが知られています。ただし、ニコチンなどの有害物質とは違って、悪さをすることはないようです。一方で、顔面骨格は脳や脊髄に近く、金属プレートやスクリューは、歯科治療の材料と同様に、頭蓋部CT画像の撮影のときにハレーションを起こす原因となります。イオンの体内蓄積はやはり気持ち悪い、将来病気になった場合に診断の邪魔になるのは困ると思われる方は、除去手術を受けていただくのが良いと思います。
除去手術は1泊2日の入院(全身麻酔下)で行います。最初の手術が終わった後、おおむね6カ月から1年の間に除去手術を行うのが良いと思われます。皮膚を切開してスクリューを止めた場合でも、除去するときは再び皮膚を切ることなく、口の中の粘膜を切って取ることが可能です。ただし、術後の腫れは初回の手術と同程度に起こりますし、手術による瘢痕(かたい線維性の傷)がまたできることはご承知ください。

洛和会音羽病院

〒607-8062
京都市山科区音羽珍事町2



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