矯正・顎矯正外来 Q&A

 

  1. どのような方が治療対象となるのでしょうか?
  2. 治療期間はどのくらいですか?
  3. 治療に必要な費用は?保険はききますか?
  4. 手術を受けるとしたらどんな準備が必要ですか?
  5. 手術は入院が必要ですか?
  6. 手術はどれくらい時間がかかるのですが?出血量は?症例数は?
  7. どれくらいで手術前の普通の生活(会話・食事)に戻れますか?
  8. 手術の後遺症は?
  9. どんな人が入院や手術を担当するのですか?
  10. 金属のプレートやスクリューはとる必要がありますか? とるとしたら入院は?

 

1.どのような方が治療対象となるのでしょうか?

少し聞き慣れないかもしれませんが「顎変形症(がくへんけいしょう)」という病気である、と診断された方が治療対象となります。顎変形症は上あごの骨または下あごの骨、あるいはそれら両者の大きさや形、位置などの異常、上下のあごの関係の異常によって顎顔面の形態的異常と咬合の異常をきたして美的不調和を示すもの、と定義されます。

これらの歯の位置を含めた顎骨の異常は機能的には咀嚼(そしゃく)、嚥下(えんげ)、発音、呼吸といった異常を生じるとともに、審美的にも様々な障害を引き起こす可能性があります。治療としては歯科矯正治療だけでは不十分なことが多く、顎骨に対する外科的な手法、すなわち顎矯正外科(がくきょうせいげか)により顎顔面の形態的異常を修正して機能的にも審美的にも満足が得られるようにするのです。ただし美容形成と顎矯正治療は根本的に異なるもので「こんな風に顔を変えたい」というご要望にはお答えできません。一方で、あごを動かすのに付随して顔の形が変わることは避けられません。上あごを動かせば鼻の形や周囲皮膚の形態が、下あごを動かせば唇からあごの先(オトガイ部)の形が変わります。

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2. 治療期間はどのくらいですか?

もちろんその方その方のあごや咬み合わせの状態に応じて変わります。一般的には、まずわれわれ口腔外科医と矯正をしていただく先生との「診断」が一致し、それを患者さまに説明申し上げ納得していただいてから治療が始まるわけですが、最初に治療の障害となるむし歯や親知らずの処置が必要です。

その後、術前の矯正治療(歯に装置をつけてワイヤーで動かします)に取りかかっていただき、手術に最適な歯並びになったところで手術のための再診断と口腔外科への紹介が行われます。ここまでの期間が最も長くかかり、ご年齢や動かす量にもよりますが1~2年を要することが多いようです。手術後の6カ月間は当院と矯正の先生との両方に受診していただきます。この間に術後の経過観察を怠ると噛み合わせがずれてしまう可能性があります。面倒くさくても何も問題が起きていないことを確認するために必ず受診してください。術後矯正は1年程度で終了することが多いようです。

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3.治療に必要な費用は?保険はききますか?

「顎変形症」という病名に対する手術・入院費用は一部の例外を除き基本的には健康保険が適応されます。育成医療・更生医療の指定を受けられた矯正歯科医院では保険で定められた歯科矯正の治療費を、当院では同じく保険で定められた手術・入院の治療費をお支払いいただきます。

また顎矯正治療は高額療養費に対する償還払い制度の対象になりますので、1カ月間に支払われた医療費の自己負担額(差額ベッド代などは除く)が定められた限度額(標準報酬月額により変わる)を超えた場合に「患者さまからの請求、申請」により払い戻される場合があります。

詳しくは「高額療養費について」のところで説明していますが、該当するかどうかのご確認や申請の手続きは市町村の窓口などでお願いします。

退院時にお支払いになる費用は手術方法、骨の固定に使う材料、入院中に必要な検査やお薬の量によって異なります。以下の当院での一例をご参考にしてください。

 

手術名 固定材料 費用の例
下顎枝矢状分割法  チタンスクリュー(4本) 約17万円
 吸収性スクリュー(4本) 約21万円
 チタンプレート(2枚) 約28万円
 下顎骨延長法  延長装置(1個) 約28万円
 オトガイ形成術  チタンプレート(1枚) 約9万円
 Le Fort I 型骨切り術
+下顎枝矢状分割法
 チタンプレート(2枚)
+チタンスクリュー(4本)
約38万円
 Le Fort I 型骨切り術
+下顎枝矢状分割法
+オトガイ形成術
 チタンプレート(2枚)
+チタンプレート(2枚)
+チタンプレート(1枚)
約52万円
 Le Fort I 型骨切り術
+下顎枝垂直骨切り術
 チタンプレート(2枚) 約33万円
 吸収性プレート(4枚) 約49万円
 外科的口蓋拡大術  なし(持ち込み) 約10万円
 前歯部歯槽骨切り術  なし(持ち込み) 約12万円
 皮質骨骨切り術  なし(持ち込み) 約8万円

 

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4.手術を受けるとしたらどんな準備が必要ですか?

検査手術はすべて全身麻酔で行われます。そのため心臓や他の内臓の病気などで治療に支障がないかどうか、また隠れた病気がないかどうかなどを十分に検査する必要があります。かかりつけの病院があればまず紹介状をお書きしますので受診していただくのがよいでしょう。治療を受けられる方が未成年の場合、保護者の方には必ず手術内容の説明をお聞きいただいた上で同意をいただきます。手術によっては自己血輸血が必要な場合があります。貧血傾向のある方は鉄分の摂取を心掛けていただき、緑茶はあまり飲まないようにしてください。

 

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5.手術は入院が必要ですか?

入院特別な場合を除き入院、全身麻酔下で治療します。詳しくは術前検査の際にお話ししますが、手術の前日に入院していただき、平均術後5日目で退院となります。すなわち手術の日をいれて約1週間とお考えください(皮質骨骨切り術、外科的口蓋拡大術などは手術当日の入院、1泊2日で済む場合があります)。入院中はなるべく安静を心掛けてください。痛みは個人差が大きいものですが、術後2日ほどで落ち着くのが普通です。他にも麻酔チューブによるノドの痛みや手術によっては息がしづらいなどのつらいこともあります。入浴、シャワーは熱が下がったら許可されます。術後は外来で1日に2回、口腔内の洗浄を行いますが、ご自身でも食事後の保清に気をつけてください。詳しくは入院検査の終了後に入院生活の案内をお渡ししますのでお読みください。

 

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6.手術はどれくらい時間がかかるのですが?出血量は?症例数は?

手術によって変わりますので下記の表をご覧ください。複数の手術を行う場合は時間、出血量ともに足して考えてください。なお術後の吸引によって体外に出た出血量は含まれていません。手術による出血でいわゆる輸血を必要とした方は当院では現在までありません。平成17年度に当院で行われた手術ののべ症例数は下記のとおりです。(手術症例数は120例)

 

手術名 所要時間 術中出血量 症例数
 下顎枝矢状分割法 2:00 150cc 26
 下顎枝垂直骨切り術 1:30 100cc未満 60
 下顎骨延長法 2:00 150cc 2
 オトガイ形成術 1:00 100cc未満 32
 Le Fort I 型骨切り術 2:30 250cc 59
 上顎骨延長法 2:30 250cc 2
 外科的口蓋拡大術 2:00 100cc未満 4
 前歯部歯槽骨切り術 1:30 200cc 12
 皮質骨骨切り術 1:00 100cc未満 6

 

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7.どれくらいで手術前の普通の生活(会話・食事)に戻れますか?

下顎枝垂直骨切り術を除き、退院時には口が開いていますので会話には支障ありません。しかし口が開きにくいのはしばらく続きますから吐き気をもよおす原因となるようなことは術後2週間、できるだけ避けてください。

たとえば空腹での飲酒、コーヒーや炭酸飲料の飲み過ぎ、タバコの吸い過ぎなどです。もしも吐き気をもよおしたら、ゴムで固定されている場合は躊躇せず自分でゴムを切って口をあけてください。そのためには常に小さなはさみを持ち歩くことも必要です。口を開けることができない、という状態は緊急時には非常に危険であるという認識を持って行動してください。食事は退院直後からしばらく軟食を摂るようにしてください。

 

経口流動食は処方箋でお出しすることもできます。ゼリー食や栄養補助食品は病院の地下売店で販売していますし、ケース単位で購入される場合にはメーカーの宅配サービスがご利用になれます(エンジョイゼリー 株式会社クリニコ 0120-52-0050、テルミールミニ テルモ株式会社 0120-563-255)。どんな手術もおおむね1カ月後には硬いもの以外は食べられるようになるでしょう。顎矯正手術はあごの骨折と同じで骨がくっついてしまえば、食べる、話すはリハビリをしているようなものです。食べられそうなものは積極的に挑戦していってください。

 

社会人の方にとっては仕事に復帰するにはどのくらい期間がかかるのか、大変気になるところですね。もちろん手術法によって異なりますし、仕事の内容によっても異なります。先にも述べましたように下顎枝垂直骨切り術以外の手術では退院時には口が開けられますから、肉体的な重労働を除き、体力が回復すれば術後2週間程度でも復帰することが可能です。

 

下顎枝垂直骨切り術を受けられた方は食事以外の時間もなるべくゴムをかけておいていただきたいので、仕事上の会話に支障をきたすかもしれません。しかし術後1カ月たてば必要に応じてゴムをはずしていただいても大きな問題にはなりません(睡眠中は必ず付けてください)ので、仕事に制限があるのは長くても術後1カ月とお考えください。ただし激しい運動やあごを強打するおそれがあるスポーツはさらに1カ月間は控えてください。またオトガイ形成術や下顎の前歯部歯槽骨切り術を受けられた方はスポンジ状の圧迫素材(レストンR)を最低でも術後3カ月間使用していただくのが効果的です。見た目が気になるかもしれませんが、日中もお使いいただくのが基本です。同様に皮膚を切ってスクリューを止めた場合はサージカルテープを6カ月間使っていただくとほとんど傷が目立たなくなります。
ゴムのかけ方、テープの貼り方などの細かい指導、次回来院のお約束などは退院時にさせていただきます。

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8. 手術の後遺症は?

手術される場所は顔やあごといった非常に複雑で繊細な構造と機能を持ったところです。手術法によって起こりうる後遺症は変わりますので一言では説明できません(各手術の説明をご参照ください)。下顎枝矢状分割法の最も重篤な障害は下唇の感覚が一時的に鈍くなることで、この手術を受けた方の約一割に認められます。また歯槽骨切り術では骨を削った部分の近くの歯の色が悪くなることがあります。上あごの手術では顔の腫れがなかなか引きにくい方もおられますし、鼻の通りが悪くなったと感じられるかもしれません。

後遺症ではないのですがご自身の容貌の変化に過度の期待をお持ちの場合は「思い通りの顔の形にならなかった」と感じられるかもしれません。しかし人間の顔面骨格の位置を変えるにはおのずと制約があり、設計図で作るロボットのようにはいかないことをご了承ください。

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9.どんな人が入院や手術を担当するのですか?

手術手術時はその手術の執刀医となれるものが複数参加し、助手を含め3~4人がチームを組んで行います。同じものが外来での術前検査から入院のお世話および退院後の経過観察まで担当します。手術の執刀は基本的には紹介をいただいたものが行いますが、研修指定病院ですので簡単な処置は指導医監督のもとで研修中の歯科医師が行う場合があります。

 

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10. 金属のプレートやスクリューはとる必要がありますか? とるとしたら入院は?

手術に用いたチタン製のプレートやスクリューは人体には無害であると言われています。ですから「必ず取らなければならない」ということはありません。

しかし長年の間に身体の中で表面がイオン化して血液の流れに乗って肺などの臓器に蓄積することが知られています。ただしニコチンなどの有害物質とは違って「悪さ」をすることはないようです。一方で顔面骨格は脳や脊髄に近く、金属プレート、スクリューは歯科治療の材料と同様に頭蓋部CT画像の撮影に際してハレーションをおこす原因となります。イオンの体内蓄積はやはり気持ち悪い、将来の病気に際して診断の邪魔になるのは困ると思われる方は除去手術を受けていただくのが良いと思います。

除去手術は1泊2日の入院(全身麻酔下)で行うことができます。手術後おおむね6カ月から1年の間に除去手術を行うのが良いと思われます。皮膚を切開してスクリューを止めた場合でも除去する時は再び皮膚を切ることなく、口の中の粘膜を切って取ることが可能です。ただし、術後の腫れは初回の手術と同程度に起こりますし、手術による瘢痕(かたい線維性のキズ)がまたできることをご承知おきください。

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