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対応疾患 甲状腺腫瘍

  1. はじめに
    前任地の大阪医科薬科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科にて、甲状腺腫瘍の臨床と研究を精力的に行い、過去約25年間に855例(良性腫瘍253例、悪性腫瘍(=甲状腺癌)602例)の診断・治療(手術)を行ってきました。

    甲状腺手術は、良性腫瘍が多いこともあり、経験が乏しい術者が安易に施行されることがあります。甲状腺には反回神経が近接して走行し(損傷すると「声がれ」が起こる)、その安全、確実な保護が求められます。また術後出血を起こしたとき、気道が近傍にあるため、致命傷になることもあります。そのため、甲状腺腫瘍に対する手術は技術を要するものの一つです。
  2. 甲状腺とは
    甲状腺は前頸部(ネクタイの「結び目」の位置)に、蝶々型をした臓器です。そこに発生した腫瘍を甲状腺腫瘍(悪性を甲状腺癌)と呼称しています。
  3. 良性甲状腺腫瘍と悪性甲状腺腫瘍(=甲状腺癌)
    甲状腺腫瘍には、良性腫瘍と悪性腫瘍(甲状腺癌)があります。手術症例は悪性腫瘍の方は多いですが、良性腫瘍では経過観察とする症例も多いため、実際には良性腫瘍の方が圧倒的に多いと考えられます。
  4. 良性甲状腺腫瘍の病理組織型と手術適応
    良性腫瘍は濾胞腺腫と腺腫様甲状腺腫(病理学的には腫瘍ではありませんが、臨床上良性腫瘍として取り扱っています)でほとんどを占めています。良性腫瘍で手術適応となるものは、大きいもの(3-4cm以上)、増大傾向のあるもの、尾側(縦郭側)に進展してるもの、悪性を否定できないものです。それ以外は半年から1年に1回超音波エコーによる経過観察を行います。
  5. 悪性悪性腫瘍(甲状腺癌)の病理組織型と手術適応
    悪性腫瘍の多くは乳頭癌(顕微鏡検査で乳頭状の増殖を示すため)です。そのうち低分化(顕微鏡検査による)のものは低分化癌として独立した名称が与えられています。その他、濾胞癌や未分化癌などがあります。悪性腫瘍(甲状腺癌)は一般に手術適応です。
  6. 診断・検査
    1. 診断・検査
      CT(可能なら造影CT)および超音波エコーによって診断します。
    2. 針生検
      超音波エコーガイド下に施行する穿刺吸引細胞診が有効な手段です。採血で用いる細い針を使用し、外来で簡単に行えます。ただし、抗凝固薬や抗血小板薬を服用している場合はそれらを休薬してから行います。
    3. 血液検査
      甲状腺ホルモン量を測定しますが、甲状腺腫瘍では一般に機能亢進あるいは機能低下をきたしていることはまれです。
    4. 反回神経麻痺(声がれ)
      反回神経は甲状腺に近接して走行しています。腫瘍が神経を侵した場合、反回神経麻痺(声がれ)が起こります。喉頭ファイバースコープで声帯の運動を観察することで診断ができます。外来診察で簡単に検査できます。
  7. 治療(手術)
    甲状腺腫瘍は、良性、悪性腫瘍ともに手術が第一選択になります。
    1. 良性腫瘍の手術
      良性腫瘍では腫瘍を含めて甲状腺を半分切除する術式が一般的です。手術時間は1時間から2時間です。
    2. 悪性腫瘍の手術
      悪性腫瘍では、良性腫瘍と同様に腫瘍を含めて半分切除する術式が一般的です。加えて、周囲のリンパ節も同時に摘出します(甲状腺切除と同じ術野で可能)。腫瘍が進展しているなどは甲状腺全摘を行います。また側頸部(頸部の側方)にリンパ節転移のある場合は同時に郭清します。半分切除+周囲のリンパ節切除の手術時間は1時間半から2時間の手術です。 良性・悪性腫瘍手術ともに術中出血はほとんどありません。
    3. 皮膚切開

      鎖骨上に横切開(皮膚線に沿って)を加えます。皮膚線に沿って切開しますので、術後の傷がきれいになります。
  8. 術後合併症
    1. 反回神経麻痺(声がれ)


      甲状腺には反回神経が近接して走行し(損傷すると「声がれ」が起こる)、その安全、確実な神経保護が求められます。術前に麻痺(声がれ)がないときは、ほとんどの場合神経温存が可能であり、声がれは起こりません。ただ、神経の剥離操作のため、一時的な麻痺を起こすことが10%程度あります。その場合は数か月で回復することがほとんどです。
    2. 術後出血
      術後1~2%に起こるとされています。24時間以内、特に12時間以内に起こることが多いです。甲状腺の周囲は「気道」であり、呼吸困難を生じることがあるため、もし出血が起こった場合、早期に発見する必要があります。もう一度麻酔をかけて止血処置を行うこともあります。
    3. 呼吸困難
      術後両側の反回神経麻痺が生じた場合、呼吸困難が生じます。このような場合は気管切開を行い、気道を確保します。
    4. 低カルシウム血症(手のしびれ)
      甲状腺全摘を行った場合、副甲状腺(甲状腺に隣接している)も摘出されることがあり、その場合術後に低カルシウム血症(手のしびれ)が起こります。これは術直後から起こり、点滴でカルシウムを補充します。退院後は内服で補充します。
    5. 甲状腺機能低下
      甲状腺は甲状腺ホルモンを産生しています。切除すると、甲状腺機能が低下することがあります。半切では約半数の方で、ホルモンの補充が必要になります。錠剤の内服です。ホルモンの状態は血液検査で容易にわかります。
  9. 甲状腺癌の成績(生存率)
    生存率に関わる因子はステージ(腫瘍の大きさとリンパ節転移の有無)と年齢です。しかし、乳頭癌の予後は良好であり、疾患特異的5年生存率は97~100%です。ただし、発育速度が遅いため、長期にわたる観察が必要です。一方低分化癌の予後は乳頭癌と比較するとやや不良です。

参考文献(発表論文)

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