ジャンパー膝
ジャンパー膝は膝蓋腱炎とも呼ばれ、ジャンプや着地、ダッシュやストップなど、急激な動作を繰り返すことによって、膝蓋腱に生じるオーバーユース障害の1つです。ジャンプ、着地を繰り返す競技に多く、男性に多いのが特徴です。特に競技レベルが上がってくる中学~高校にかけて発症リスクが高くなる傾向にあります。
特徴
- バレーボール
- 体操
- 陸上
- サッカー
- バスケットボール
全国中学校バレーボール選手権大会に出場し強化指定選手に選抜された男子201人、女子187人に対しメディカルチェックを行った結果
膝関節前面に圧痛が認められた競技者は84例、107膝(21.6%)
(引用:林光俊ほか:「バレーボールにおけるジャンパー膝.臨スポーツ医29」(臨時増刊号):88-92,2012)
原因・症状
大腿四頭筋の収縮に伴い、膝蓋腱に強い牽引力が繰り返し加わって生じます。
典型的な症状はジャンプや着地、長距離走行した際などに生じる膝蓋腱部(膝のお皿の下あたり)の痛みです。 そのため、思い切って跳べない、しゃがめない、全力で走れないなどのパフォーマンスの低下を訴えることが多くあります。
同じように成長期のスポーツ傷害で膝が痛くなるものにオスグッド・シュラッダー病というものがありますが、ジャンパー膝との大きな違いは痛みの部位にあります。オスグッド・シュラッダー病は脛骨粗面(右図の△部分)に痛みが出ますが、ジャンパー膝は膝蓋腱(右図の○部分)に痛みが出ます。
分類
ジャンパー膝はBlazina分類で以下のように分類されます。
- 大腿四頭筋の膝蓋骨付着部
- 膝蓋腱の膝蓋骨付着部(※最も多い)
- 膝蓋腱の脛骨粗面付着部
また痛みの程度によって、3つのレベルに分類されます。
- ステージ1:運動後に痛みが出現するレベル
- ステージ2:運動中にも痛みが認められるレベル
- ステージ3:運動パフォーマンスに影響を及ぼすほどの痛みがあるレベル
治療
ジャンパー膝は大腿四頭筋の繰り返す収縮によるオーバーユース障害であり、その収縮に伴う膝蓋腱への負荷を軽減することが治療の基本になります。当クリニックでは物理療法機器として微弱電流治療器 アキュスコープ80L6®マイオパルス75L®やマルチ電気治療器 インテレクト アドバンス・コンボ 2762CC®を用い、痛みの鎮静化を図っています。
アキュスコープ80L6®マイオパルス75L®
インテレクト アドバンス・コンボ 2762CC6®
リハビリテーション
競技特性やジャンプ、ランニング時の体の使い方、筋力、柔軟性をチェックし、痛みの原因を探します。大腿や下腿の柔軟性が低下している場合が多いため、ストレッチを行います。
前ももストレッチ
前ももストレッチ
内ももストレッチ
外ももストレッチ
裏ももストレッチ
ふくらはぎストレッチ
その他、膝蓋腱への負荷を分散させるために、お尻周りや足首などの患部外トレーニングも行います。
ヒップアップ
内転筋トレーニング
殿筋トレーニング
カーフレイズ
ステージ1では競技を継続しながら治療を行います。ステージ2では一定の運動量の制限、ステージ3では運動制限が必要になります。
競技復帰までの期間は重症度、スポーツ種目によって大きく異なり、痛みの消失・軽減により徐々に競技復帰していきます。
フロントランジスクワット
スクワット
ニーアップ
ジャンパー膝は大腿四頭筋など、膝伸展機構のオーバーユース傷害とされていますが、そもそもなぜオーバーユースが生じるのでしょうか。ダッシュやジャンプ、切り返しといった、各スポーツ動作において下肢の筋力はもちろん大切ですが、左右差や四頭筋-ハムストリングスの筋力差が大きければ大きいほど、その使い方に偏りが生じてしまいます。特にジャンパー膝では大腿四頭筋が過剰に収縮することで、腱や付着部である脛骨粗面に炎症が生じます。そのため、スクワットやランジ動作などスポーツに必要な基本動作で体の使い方を再学習し、四頭筋に頼りすぎない体づくりをすることが大切です。また、体の硬さ(特に大腿四頭筋)は患部へのストレスとなるため、日頃からストレッチやマッサージなど全身のコンディショニングを継続して行うことが望ましいです。
再発予防
運動前には十分なウォーミングアップを行い、全身の筋力の柔軟性を確保したうえでストレッチを行いましょう。反動はあまりつけずに30秒程度かけ、ゆっくりと大腿四頭筋をストレッチします。
運動後も同様のストレッチを行い筋疲労の蓄積を防止しながら、炎症を避けるためのアイシングを併用しましょう。自宅で入浴中の筋肉のマッサージや入浴後のコンディションの良いタイミングでのストレッチも有用です。 症状が改善した後も継続するようにしましょう。