半月板損傷
半月板は膝関節の脛骨上面を覆う繊維軟骨であり、関節接触面の安定性を増大させ、荷重を分散・吸収する機能を持っています。
体重がかかった状態で膝関節に過度な回旋力が加わると、半月板の一部が脛骨と大腿骨の間に挟まり損傷を受けます。
10~20歳台のスポーツ外傷では膝前十字靱帯(ACL)損傷に次いで多いとされています。
特徴
スポーツ代表例
- バスケットボール
- スキー
- バレーボール
- サッカー
- ラクビー
- ラクロス
- アメリカンフットボール
スポーツ外傷における膝の靭帯の割合
半月板損傷は、スポーツ外傷全体の約15%を占めます。
原因・症状
切り返しなど膝を回旋させるスポーツでの受傷が目立ちます。また、中高年者に関しては、立ち上がり時や無理な態勢で膝を捻った際に受傷するケースが多くなっています。
受傷直後では損傷側の関節に痛みが生じます。損傷が半月板辺縁までおよんでいる場合は関節血症を認めますが、半月板単独の損傷では大量の出血をきたすことはありません。
また、半月板損傷では、しばしば
引っ掛かり感(catching)やクリック音(click)、ロッキングといった症状がみられます。
分類
半月板の損傷の仕方にはいくつかの種類があり、分類分けをすることができます。
剥離損傷
半月板の付着部から剥がれるように損傷していく状態です。
縦断裂
半月板が縦方向に断裂した状態です。ひどい場合、バケツ柄状に離開してきます。
横断裂
半月板が横方向に断裂した状態です。
水平断裂
半月板が水平方向に断裂した状態です。
parrot beak断裂
半月板の横断裂と縦断裂が加わったように断裂した状態です。くちばし(=parrot beak)のような形と例えられています。
徒手検査
マックマレーテスト
膝を最大屈曲位とし内外関節列隙に手指を当て、下腿に回旋ストレスを加えながら膝を伸展させます。外側半月板損傷では下腿内旋で膝を伸展させるときに、内側半月板損傷では下腿外旋で膝を伸展させるときに疼痛が誘発されます。
アプレー牽引テスト
うつ伏せで膝を90°屈曲し、大腿部を検者の膝で固定します。
下腿を上方に引っ張り上げて膝の関節包を緊張させ、疼痛が誘発されると陽性になります。
アプレー圧迫テスト
右記の手順後に足部を押さえて膝を圧迫しながら下腿を回旋させ、関節列隙に疼痛が誘発されると陽性になります。
治療
若年者ではスポーツ外傷による半月板辺縁部の縦断裂が多く、原則として関節鏡視下の半月板縫合術を行うことが望ましいとされています。
ただし、膝前十字靱帯(ACL)損傷を合併している場合は半月板縫合だけでは再断裂頻度が高いため、靭帯再建も同時に行います。
水平断裂や横断裂に関しては、部分切除術を行います。半月板は荷重機能に重要な役割を担っているため、全切除は避けることが望ましいです。
予後
半月板損傷単独損傷に対する切除後は、10年~20年経過すると切除部位に関節症変化をきたし、変形性膝関節症を生じますが、重篤な症状を呈することはまれです。
ただし、前十字靭帯断裂膝に半月板切除のみを行った後、スポーツ活動を続けると、高度の関節症をきたすリスクが高まるとされています。
リハビリテーション
受傷後は痛みに応じて松葉杖を使用します。
患部はシーネ固定し安静にします。固定期間中は患部以外のトレーニングを中心に行います。
セッティング
SLR
内転筋トレーニング
殿筋トレーニング
徐々にスクワットなどの筋力訓練を行い、筋力向上を図ります。また、電気刺激(EMS)を用い萎縮した筋肉を強化していきます。エルゴメーターでの持久力トレーニングも徐々に開始していきます。
ヒップアップ
フロントランジスクワット
スクワット
サイドスクワット
カーフレイズ
エルゴメーター
痛みの軽減に応じて負荷量を上げていきます。
片脚ランジスクワット
スターリング
スターリング
多用途筋機能評価運動装置 Biodex system4®という機械を用いて、筋力を測定します。
筋力の回復に応じて、ジョギング、ランニング、アジリティトレーニングと段階的にトレーニングを進めていきます。
多用途筋機能評価運動装置
Biodex system4®
ニーアップ
再発予防
半月板損傷は膝が捻じれたり、過剰なストレスがかかって受傷するケースがほとんどです。特にジャンプの着地、切り返し、ストップ動作が多い種目で受傷することが多いですが、膝の靭帯損傷同様に体幹や筋力差が原因で受傷しやすい肢位を強いられることが原因となります。局所的な問題だけでなく体全体の機能を把握することが大切であり、各スポーツに必要とされる動作が適切な姿勢で行われているか、しっかりチェックすることが予防につながります。