骨粗鬆症
骨粗鬆症とは、骨が脆(もろ)くなり骨折しやすい状態です。女性に多いとされ、骨折をきっかけに発見、診断されることが多くあります。適切な治療や予防、生活の工夫が重要となります。
特徴
骨は、古い骨を溶かし(骨吸収)、新しい骨を作って(骨形成)毎日生まれ変わっています。その骨吸収と骨形成のバランスが崩れ、骨の密度が低下し、骨が脆くなった状態のことを骨粗鬆症といいます。骨粗しょう症とも表記します。
骨粗鬆症は、女性に圧倒的に多く、閉経に伴う女性ホルモン(エストロゲン)の減少が骨の新陳代謝に大きく影響しているからと考えられます。60歳代では2人に1人、70歳以上になると10人に7人が骨粗鬆症になると言われています。
そのほか、年齢や遺伝的な体質、内服薬、偏食や極端なダイエット、喫煙や過度の飲酒、生活習慣なども骨粗鬆症の原因として考えられます。
骨粗鬆症により、わずかな外力(尻もちや手を付いてしまうなど)で生じる骨折を脆弱性骨折と言い、合併症として問題とされています。骨粗鬆症による骨折は「寝たきり」につながります。介護が必要になった主な原因の約10%が骨折・転倒によるものです。
診断
骨粗鬆症の診断は、若年成人(20~44歳)の骨量の平均値(YAM値)との比較によって判断します。
骨量が、
- YAM値の70%未満で骨粗鬆症
- YAM値の70~80%で骨量減少
と診断されます。
また脆弱性骨折のうち、大腿骨近位部骨折や椎体骨折を呈した時点で骨粗鬆症と診断され、治療が必要になる場合があります。
原因
さまざまな要因が重なって起こります。特に女性に多いと言われています。
- 女性ホルモンの減少
- 加齢
- 運動不足
- 栄養バランス
- 生活習慣
- 既往歴や薬物性のもの(ステロイド製剤の使用など)
症状
骨粗鬆症の一番怖いところは、「症状が進行していても自覚症状がほとんどないところ」と言えます。骨折したことを機に発見し診断されることが多くあります。
脆弱性骨折
日常動作の軽微な負荷で骨折してしまう状態のことを指します。骨粗鬆症により骨折しやすい方に多発します。骨折を繰り返しやすく、身体機能や健康状態の悪化をまねき、生活レベルの低下や介護の必要性が高くなる場合があります。
「いつのまにか骨折」という言葉があります。骨粗鬆症が進行していると、自分自身が気づかないうちに骨折していることがあります。これも脆弱性骨折の一つです。「いつのまにか骨折」は背骨(特に腰部)に多く、体の重みでつぶれたり、いすへ座るだけで起こることがあり、背中に痛みや、猫背になる場合があります。
骨折しやすい部位
脆弱性骨折には骨折しやすい部位があります。
圧迫骨折(背骨の骨折、特に腰部)
- 後方に転倒し尻餅をついたり、いすにドスンと座ることで発症する場合があります。
- 背中の曲がりが進行すると、内臓を圧迫して呼吸機能や消化機能を低下させる場合があります。
大腿骨近位部骨折(大腿骨頸部、転子部骨折)(股関節の付け根の骨折)
- 転倒しお尻や股関節の付け根をぶつけることで発症する場合があります。
- 歩行が困難になり外出や買い物、トイレなどの屋内移動に支障を来す場合があります。
橈骨遠位端骨折(手首の骨折)
- 転倒し手をついた時に発症する場合があります。
- 手に力が入りにくくなったり、家事など手先の運動に支障を来す場合があります。
上腕骨近位端骨折(腕の付け根の骨折)
- 転倒し肩を打った場合に発症する場合があります。
- 肩が挙がりにくくなり、手を上に挙げたり、洗髪や服の脱ぎ着に支障を来す場合があります。
予防・治療
予防
骨粗鬆症の原因のなかで、性別や年齢・遺伝など、後天的に変えられない要素がありますが、食生活や運動などの生活習慣を変えることで予防できる場合があります。
一般的に骨を丈夫にするにはカルシウムが必要と思われる方が多いですが、カルシウムだけを摂取するのではなく、ビタミンKやビタミンDの摂取も重要と言われています。
ビタミンK
骨にカルシウムが取り込まれるのを促し、カルシウムが尿中に排泄されるのを抑える役割があります。
納豆や卵、緑黄色野菜などに多く含まれます。
ビタミンD
腸でのカルシウムの吸収を促進し、血液に入ったカルシウムを骨まで運ぶ役割があります。カルシウムは吸収されにくい栄養素なのでビタミンDと合わせて摂取することが重要です。
鮭やカレイなどの魚類やきのこ類に多く含まれます。また、日光(紫外線)に当たることにより、皮膚で合成されます。屋外での運動やレクリエーションに参加することも大切です。
生活習慣の観点
お酒やたばこなどの嗜好品も控えることがいいとされます。お酒には利尿作用があり、飲みすぎるとカルシウムも一緒に排出されてしまい、その上、腸でのカルシウムの吸収も妨げてしまいます。たばこは腸の働きを抑え、カルシウムの吸収を妨げます。特に女性の喫煙は骨粗鬆症に大きく影響している女性ホルモンの分泌を減少させてしまいます。
転倒による骨折を防ぐためには、自宅内の整理整頓も重要です。高齢者の転倒は屋外や民間施設などでなく、大半が自宅内で起こっていると言われています。居住スペースには絨毯やコンセント、階段など転倒の危険性が高い場所がたくさんあります。身の回りの整理を行い、少しでも転倒の危険性を減らした環境で生活することが大切です。
骨粗鬆症予防のために行う運動の目的は、「丈夫な骨づくり」「筋力強化」「バランス改善」と言えます。スクワットや踵上げ運動、屋外でのウォーキングなどを行うことで、骨に適度な圧力が加わり、骨が強くなります。また、運動により血液の流れが良くなることで、骨形成が活発になります。筋力を鍛え、転倒しにくくなり、骨折の予防につながります。
自分のペースで無理なく運動を継続し、「丈夫な折れにくい骨」「転倒しにくい体」を作りましょう。
治療
薬物療法
骨粗鬆症の治療薬は大きく分けて骨吸収を抑制するもの、骨形成を促進するもの、カルシウム製剤の3種類です。
骨粗鬆症の治療はすぐに効果が出ず、年単位の長期間で効果が現れると言えます。薬物治療を開始しても自己判断で服薬ができていない場合があります。治療は根気強く続ける必要があり、薬の形や投与間隔の配慮も可能です。服薬については主治医や薬剤師に相談してください。
食事療法
カルシウム、ビタミンK、ビタミンD以外にもたんぱく質やミネラルなど、さまざまな栄養素をバランスよく摂取することが重要です。
運動療法
「丈夫な骨づくり」「筋力強化」「バランス改善」を目標に無理なく運動を継続することが重要です。
(参考・引用文献)
- 日本整形外科学会
- 日本骨粗鬆症学会
- 骨粗鬆症の予防と治療のガイドライン2015年度版
- 日本転倒予防学会