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投球障害

投球障害とは、野球を中心に、投球動作(ボールを投げる)において支障をきたし投球が困難になることを指します。投球動作中に肩関節や肘関節などにを痛みや動かしにくさなどの機能障害を起こしてしまいます。小学生から高校、大学だけでなく社会人、プロまでさまざまな種類の投球障害が起こります。各年代全て、病態や競技レベル、またチーム事情や大会時期などを考慮した総合的な判断、診断・治療が必要です。

投球動作とは

投球動作は、 一般的にワインドアップ期、アーリーコッキング期、レイトコッキング期、アクセラレーション期、フォロースルー期から構成されます。

ワインドアップ(Wind up)期

立位姿勢から片脚立位となるまでの期間です。まっすぐ立てているか、首は投球方向に十分に回旋できているかなどがポイントとなります。

アーリーコッキング(Early cocking)期

片脚立ちから足が着くまでの期間です。両側の股関節の柔軟性を必要とし、非投球側の足をボールの進行方向へ着地させます。

レイトコッキング(Late cocking)期

非投球側の足が着地し、肩、体幹、股関節が最大限「しなる」までの期間です。非投球側の膝の向きや、体全体のしなりがポイントです。しなりの獲得には下肢の安定性が必要となります。

アクセラレーション(Acceleration)期

肩、体幹、股関節が最大限しなってから、ボールリリース(ボールが手から離れる時)までの期間です。レイトコッキング期同様、非投球側下肢の安定性が必要となります。

フォロースルー(Follow through)期

ボールが手から離れて投球動作が終わるまでの期間です。投球側下肢への体重移動や骨盤、体幹の回旋運動が必要となります。

不良投球動作

アーム投げ、肘下がり、肘抜きの3パターンが多く見られます。
いずれも肩や肘に痛みを生じて投球を継続している代償動作もしくは、痛みが無くても投球障害を起こしやすく予防的に改善の必要があります。

アーム投げ

レイトコッキング期の際、胸の広がりや腕のしなりが利用できず、肘が伸びた状態で投球することです。

アーム投げ

肘下がり

レイトコッキング期の際 、肘が両肩関節を結んだ線より下がって投球することです。

肘下がり

肘抜き

アクセラレーション期からフォロースルー期の際、両肩関節を結んだ線より、前方に肘が出た状態で投球することです。

肘抜き

アーム投げ、肘下がりの投球動作では肘の内側が損傷しやすく、肘抜きでは肘の後方を損傷する場合があります。
いずれも股関節、体幹、肩関節などの柔軟性や筋力の問題によって生じることが多いです。不良な投球動作を繰り返し続けることで、肩や肘に負担が掛かり、投球障害を生じます。
パフォーマンスにおいては、「コントロールが安定しない、ボールの急速が上がらない、ボールの出どころが分かりやすく打たれやすい」などのデメリットが生じます。

不良な投球動作・良好な投球動作

治療の流れ

投球障害の治療の流れとして、「疼痛期」「投球準備期」「競技復帰期」と3段階に分類しています。投球障害は全身運動であり、下肢、体幹における不良なコンディションや、姿勢異常、不良な投球フォームにより生じます。よって全身のコンディショニングを良好に保つことが、投球障害の予防に重要です。

疼痛期

  • 疼痛の早期改善
  • 肩関節に影響を及ぼす因子の抽出、改善
矢印

投球準備期

  • 投球動作に必要な機能改善
  • 機能評価と投球動作との結びつき
矢印

競技復帰期

  • スローイングプログラム
  • フォームチェック

治療のスケジュール例

初診から2週まではノースロー(投げないこと)で疼痛の改善を図る時期です。この時期の間にストレッチや筋トレ、動きの練習や各ポジションの特性を生かしフォームチェックを実施します。2週からスローイングプログラムを実施し、実際の投球動作に向け、低負荷の運動から段階に応じて負荷量を増大させていきます。
また例外として、試合直前などの急を要する場合などは個別対応で実践に向け調整します。

不良な投球動作・良好な投球動作

治療方法

疼痛期

疼痛期では早期より、姿勢のチェックなどを行い、何が、どこに痛みを誘発しているのかを評価します。原因に対して柔軟性や筋力の改善を行い、早期に疼痛を消失させることを目指します。疼痛の早期改善のため、障害部位に影響をおよぼす因子を抽出し、改善させるために、全身即時調整法を実施します。

投球準備期

投球準備期では投球動作に必要な、身体機能の改善に努めていきます。
機能改善と投球動作の改善が重要であり、投球動作に必要な筋力や柔軟性を複合的動作を用いて習得していきます。

競技復帰期

競技復帰期では、負荷量の設定とスローイングやフォームのチェックを行っています。負荷量は、状態や復帰時期に合わせてプログラムを実施し、復帰を目指します。
プログラム中に痛みや違和感があれば、再評価を行い微調整を行いながらプログラムを進めます。また、シャドーピッチングを行い投球フォームを確認し、投球準備期では確認したランジ動作などが投球動作で実際に定着しているかを確認します。
プログラムが終了し、問題なく投球が可能であれば、リハビリテーションは終了となります。

その他

必要に応じて、動作解析や筋力測定などを行い、競技復帰や再発予防に向けた取り組みを行います。
使用機器は、三次元動作解析装置VICON MX®や多用途筋機能評価運動装置Biodex system4®などを用いて行います。

三次元動作解析装置VICON MX®

三次元動作解析装置VICON MX®

多用途筋機能評価運動装置Biodex system4®

多用途筋機能評価運動装置Biodex system4®

疾患別治療・リハビリテーション

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