腰椎分離症・分離すべり症
腰椎分離症とは、スポーツなどによって繰り返される腰椎(腰の背骨)への伸展(後ろに反る)と回旋ストレスを原因とする関節突起間部の疲労骨折です。
発育期のスポーツ選手に好発され、腰部に繰り返しストレスがかかることで発症します。
保存療法のリハビリテーションでは、腰部への負荷が増大した原因を評価し、改善・修正することが必要です。
原因・症状
原因は、スポーツなどによって繰り返される腰椎(腰の背骨)への伸展(後ろに反る)と回旋ストレスと考えられています。ストレスが増大する因子としては、下半身の体の硬さや体幹の筋力の弱さなどの身体機能と腰を過度に反ってしまうような不良なスポーツ動作が挙げられます。
腰椎分離症を疑う重要な所見としては、骨折した腰椎棘突起(背中に出っ張った背骨部分)の圧痛、伸展時痛(後ろに反ったときの痛み)があります。
また、分離症が進行すると分離すべり症へと移行し、重篤な症状が現れる可能性があります。その症状として、下半身の痛みやしびれ、動きにくさ、感じにくさ、排尿や排便の障害などの症状が現れます。
診断
診断には、エックス線・CT・MRIが多く用いられています。
- エックス線は、「スコッチテリアの首輪」(首輪をつけている犬のスコッチテリアのように見える)という特徴的な所見が認められることがあります。
- CTは、エックス線では骨癒合の程度など鑑別が困難な際に有用です。
- MRIは、CTでの変化が生じる前の段階であっても骨髄浮腫(骨の炎症)を評価することができます。
正常な骨と腰椎分離症・分離すべり症の骨
正常と比べて骨の中に切れ目が確認できます。この部分が骨と骨が分離している部分です。
治療
治療は保存療法が第一選択です。腰椎分離症は、大きく初期・進行期・終末期の3つの病期に分類されています。
初期と進行期は骨癒合が得られる可能性がありますが、終末期では非常に低いとされています。そのため、当クリニックでは患者さんと医師、理学療法士、作業療法士で、病期・年齢・患者さんのニーズを十分に話し合い、治療方針を決めていきます。
リハビリテーション
リハビリテーションでは、単に腰痛を改善するだけでなく、なぜ腰部への負荷が増大してしまったのかを評価し、患者さん一人一人の問題点を解決できるよう、身体機能(体の硬さや筋力の低下)、不良なスポーツ動作の改善を行っていきます。それにより、分離症発症前よりも高い競技レベルへの復帰を目指していきます。
お尻周りのストレッチ
太ももの前のストレッチ
体幹トレーニング
予後
腰椎分離症に対する保存療法の成績を世界的にまとめた研究では、レベルを問わずスポーツ復帰できたのは92%であり、損傷前のレベルにスポーツ復帰できたのは88%であったと報告されています。また、スポーツ復帰までに要した期間は4.6カ月とされています。(※1)
患者さんの背景などによって個人差はありますが、当クリニックでは安全かつ1日も早い復帰を患者さんと共に目指していきます。
(※1)
Grazina R, Andrade R, Santos FL, Marinhas J, Pereira R, Bastos R, Espregueira-Mendes J (2019) Return to play after conservative and surgical treatment in athletes with spondylolysis: A systematic review. Physical therapy in sport : official journal of the Association of Chartered Physiotherapists in Sports Medicine 37:34-43. doi:10.1016/j.ptsp.2019.02.005