消化器センター外科 主な対応疾患と治療方針
当科における主な対応疾患と治療方針は以下の通りです。いずれも基本方針ですので当該患者さんの状態(全身状態・年齢・手術既往・認知症の有無など)や病気の状態(進行度)などにより最終的な方針を決定します。多くの術式において術後管理はクリニカルパスで統一されており入院期間も短くなっています。(腹腔鏡下手術はいずれの疾患でも癒着や炎症高度などの理由により開腹による手術に移行することがあります。)
胃がん
- 胃癌治療ガイドラインに準じて治療方針を決定しています。
- 早期胃がん(T1aまで)は内科で内視鏡的に治療します(ESD)。
- 内視鏡治療の適応とならない早期がんに対しては、腹腔鏡下手術を行います。
- 進行がんに対しては従来通り開腹による手術の適応となります。
- 術後入院期間は約1週間です。
- 化学療法(抗がん剤治療)も積極的に行っています。
大腸がん
- 大腸癌診療ガイドラインに準じて治療方針を決定しています。
- 早期がん(T1まで)は内科で内視鏡的に治療します(EMR)。
- 内視鏡治療の適応とならない早期がんおよび進行がんに対しては腹腔鏡下手術を行います。
- 隣接臓器浸潤を伴う高度進行がんに対しては従来通り開腹による手術を行います。
- 大腸がんによる肝転移・肺転移も適応があれば手術を行います。
- 術後入院期間は約1週間です。
- 化学療法(抗がん剤治療)も積極的に行っています。
肝臓がん
- 肝癌診療ガイドラインに準じて治療方針を決定しています。
- 単発(1個だけ)の肝臓がんには手術を行います。最大径3cm以下・3個までであれば手術もしくはRFA(ラジオ波焼灼術)を行います。
- 上記以上に進行していたり肝硬変などにより肝機能が高度に障害されていたりする場合にはTACE(肝動脈化学塞栓療法)を行います。
- 術後入院期間は約7~10日です。
- 胆管細胞がん・転移性肝がんに対しては手術もしくは抗がん剤治療を行います。
膵臓がん・胆道がん
膵癌診療ガイドラインおよび胆道癌診療ガイドラインに準じて治療方針を決定しています。
膵癌は小さくても進行していることが多く、手術適応となるものは少ないとされています。手術適応がない場合には抗がん剤治療を行います。
食道がん
食道癌診断・治療ガイドラインに準じて治療方針を決定しています。
手術適応のある食道がんに対しては京都府立医科大学・消化器外科のバックアップのもと、鏡視下手術(経裂孔的食道亜全摘術)を行います。手術適応のない場合には、京都府立医科大学・消化器内科などに紹介し、化学放射線療法を考慮します。
虫垂炎
軽度の虫垂炎に対しては抗生剤投与による保存的治療(手術をしない)を考慮します。中等度以上の炎症や糞石を伴う虫垂炎などに対しては手術を行います。
単孔式腹腔鏡下虫垂切除を基本術式としていますので、切開創はへその1カ所2cmのみです。穿孔していない(破れていない)虫垂炎であれば手術時間は約45分で術後2~3日で退院できることがほとんどです。
穿孔しおなかに膿がたまっているような炎症の強い虫垂炎は抗生剤投与により治療し、必要であればエコーガイド下に膿瘍穿刺を行います。虫垂切除は炎症が収まってから2~3カ月後に腹腔鏡下に行います(interval appendectomy)。
胆石症
胆石発作や胆嚢炎など症状を伴う胆のう結石に対して手術を行います。
単孔式腹腔鏡下胆のう摘出術を基本術式としていますので、切開創はへそ2cmと右季肋下2mmのみです(TANKO-POP)。
炎症高度の場合には心窩部に5mmの切開創を追加したり開腹による手術に移行したりすることがあります。術後入院期間は2~3日です。
そけいヘルニア
全身麻酔下に手術を行っています。メッシュにより補強する方法が一般的です。従来の方法(前方アプローチ)ではそけい部に約5cmの切開をおいて手術を行いますが、腹腔鏡下手術(TAPP)も行っています。術後入院期間は1~2日です。
2023年度 診療実績
手術件数
- 鼠径ヘルニア手術:54件(うち鏡視下:49件)
- 虫垂炎手術:51件(うち鏡視下:51件)
- 胆嚢摘出:46件(うち鏡視下:46件)
- 大腸癌手術:39件(うち鏡視下:38件)
- 腸閉塞手術:13件(うち鏡視下:9件)
- 腹膜炎手術:12件(うち鏡視下:11件)
- その他:44件(うち鏡視下:33件)
※手術室で実施された手術のみ