股関節痛でお悩みの方へ
股関節の病気
股関節は、骨盤側の寛骨臼(かんこつきゅう)[臼蓋(きゅうがい)]と呼ばれる受け側と、大腿骨側の大腿骨頭と呼ばれる球状の骨からなります。寛骨臼と大腿骨頭の表面は、正常な状態では、軟骨で覆われており、痛みを感じることなくスムーズに動きますが、何らかの理由(生まれつき関節の適合性が悪い臼蓋形成不全・股関節周囲の骨折後に生じる外傷性の変形性股関節症・大腿骨頭への血流が悪くなる大腿骨頭壊死(えし)症・関節リウマチなど)で軟骨組織が擦り減ると、正常な股関節の動きが制限され、股関節に痛みを感じるようになります。
人工股関節全置換術とは?
人工股関節全置換術は、骨盤側と大腿骨側に金属を固定して、股関節機能を再現する手術です。
- 骨盤側:
- 寛骨臼の表面を球状に削り、チタン合金製のカップをはめ込んで固定します。さらに関節側には、軟骨の代わりとして、特殊なポリエチレンやセラミックなどの摩耗の少ない素材を固定します。
- 大腿骨側:
- 大腿骨頭を切除し、そこから大腿骨の中(髄内)にステムとよばれるチタン合金製の金属を挿入して、しっかりと固定します。ステムの関節側には球状の金属製やセラミック製の骨頭を固定します。ここでスムーズな股関節の動きが再現されます。
当院での治療方針
手術での輸血について
人工股関節の再置換術(2回目の入れ換えの手術)のときのみ、術前に自分の血液を貯血し、それを術後に戻す自己血輸血を行っています。初回の手術の場合は、通常輸血を行うことはなく、体に負担のかかる自己血貯血の必要はありません。
入院期間について
内科的な合併症がなければ、手術の前日に入院し、術後10日間で退院します。手術の翌日には歩行器で歩行を開始し、術後1週間でT字杖を用いた歩行が可能です。
最小侵襲手術(MIS: Minimally Invasive Surgery)について
最小侵襲(しんしゅう)手術とは、皮膚切開を小さくし、筋組織などの軟部組織への侵襲を最小とした手術手技のことです。従来は20cm程度の皮膚切開を必要としていましたが、MISでは10cm以下の皮膚切開で手術をします。当院では、股関節の変形の程度により、前方から手術を行う前方進入法と後方から手術を行う後方進入法とを行っており、前方進入法と後方進入法ともに、10cm以下の皮膚切開で手術を行っています。
手術前後の単純エックス線像
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術前
両側の変形性股関節症の症例です。本来球状である大腿骨頭は変形し、寛骨臼と大腿骨頭の隙間は消失しています。
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術後
2週間の間隔をあけて、両側の人工股関節全置換術を行いました。術前は両股関節部痛のために這うような生活でしたが、術後は独歩で歩行しています。
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術前
左側の変形性股関節症の症例です。左側の大腿骨頭は変形し、寛骨臼と大腿骨頭の隙間は消失しています。
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術後
左側の人工股関節置換術後です。脚長差は改善し、安定した歩行ができるようになりました。