透析中運動等指導
当院では、希望者に対して透析中の運動指導(自転車エルゴメーター、レジスタンストレーニング、ストレッチなど)を行っています。透析中の運動は軽めの運動になりますが、運動継続率が高く、透析患者が陥りやすいフレイル・サルコペニアの予防効果、身体機能維持・改善、QOL向上が期待できます。当院では運動を開始された患者のうち、約90%の患者が運動を継続されています。
また、運動してから歩きやすくなった、体が楽になった、透析に来るのが楽しみになったなど嬉しいお声をいただいています。
フレイル・サルコペニアとは
フレイルとは日本老年医学会が2014年に提唱した概念で、厚生労働省研究班の報告書では「加齢とともに心身の活力(運動機能や認知機能等)が低下し、複数の慢性疾患の併存などの影響もあり、生活機能が障害され、心身の脆弱性が出現した状態であるが、一方で適切な介入・支援により、生活機能の維持向上が可能な状態像」と定義付けられています。
フレイルには身体的フレイル、精神・心理的フレイル、社会的フレイルの3つの要素があります。身体的フレイルは後述するサルコペニアや口腔機能障害による低栄養状態も含まれており、精神・心理的フレイルとは、認知症や加齢に伴う喪失感や気力が低下してくる状態をいいます。また社会的フレイルとは現役時代が終わり、家にいる時間が長くなったり、独居などで他人とのコミュニケーションを取る機会が減ってしまった結果、孤立したり、引きこもりになってしまい、社会との関わりが少なくなってしまうことを言います。
一方、サルコペニアとは高齢期にみられる骨格筋量の低下と筋力もしくは身体機能(歩行速度など)の低下と定義されています。

フレイルサイクルとは
サルコペニアが進行すると、筋肉量が減少することで、基礎代謝が落ち、少し動くだけでもしんどくなるため外出の機会が減少してしまいます。さらに外出の機会が減少することで食欲が低下し、低栄養となり更にサルコペニアが進行することとなります。このように、フレイルになってしまったことで悪循環してしまうことを「フレイルサイクル」と言います。

透析患者さんとフレイル・サルコペニア
透析患者さんは、透析をベッドの上で寝ながら受けられることが多いため、透析をされていない方と比べて活動量が不足しており、フレイル・サルコペニア有病率は非透析者・保存期CKD患者より高率です。またプレフレイルまで含めると、透析導入時には約8割がフレイルを合併しているとも言われています。一方、フレイルはトレーニングにより改善する可能性があるとされていますので、適切な介入や支援により生活機能を改善し、フレイルサイクルを予防していくことが大切です。
最後に
洛和会音羽記念病院 リハビリテーション部では透析中に実施できる運動を提案・指導させていただいております。フレイル・サルコペニアの状態を予防改善することで、透析患者さんがその人らしく夢や誇りを持ち、住み慣れたこの街で暮らし続けられるようにサポートしてまいります。
ご興味をお持ちいただいた方は、当院透析センタースタッフへお気軽にお問い合わせください。